日本有数の豪雪地帯ながら、春の山菜や夏野菜、秋のキノコや果物、山の実など、四季折々の農作物や豊富な自然食材に恵まれた飯山市。厳しい冬に備え、先人たちは知恵を絞ってその恵みを活かし、独特の食文化を育んできました。古来からの伝統の味として今なお受け継がれているこれらの郷土料理の作り方を、信州いいやま観光局スタッフのふたりが地域の先輩たちから教えていただきました。
いもなます
江戸時代から冠婚葬祭などに出されていた、寺の町・飯山の代表的な精進料理。ジャガイモ本来のデンプンを取り除いて料理するので、シャキっとした歯ざわりが特徴です。いもなますの出来映えはジャガイモの千切りの腕で決まると言われています。
田植え煮物
飯山の冬の寒さを活かして作られる凍み大根を使い、とうど(田人)衆にふるまうために大鍋でにしん等と煮込んだ料理。凍み大根は独特の風味や歯ごたえがあり、煮るとたくさんの水を含むことから、田の水に困らないとの意味合いで好んで使用されました。忙しい田植えの時期の「おごっつぉ(ご馳走)」です。
たくあんの白和え
祝い事や客寄せの時には必ず作られた「白和え」。まろやかな舌ざわりが人気の料理です。今回は冬の定番の漬け物・たくあんを使いましたが、ぜんまいやニンジンともよく合います。
左から/丸山花子さん、「飯山食文化の会」会長・坂原シモさん、萩原洋子さん
「飯山食文化の会」
飯山市を中心に失われつつある伝統の郷土食を再びよみがえらせようと、郷土の料理に詳しい人々から情報を集め、それらを再現しています。学校で子供達への食育活動や、郷土料理の伝承活動を行い、郷土の食を見直すきっかけづくりになる活動を行なっています。
信州いいやま観光局
浮田友絵さん 大西 宏志さん
飯山市で古くから冠婚葬祭などにおいて食され、親しまれて来た郷土食として、平成19年に「笹寿司」「富倉そば」「いもなます」「えご」の4品が飯山市の無形民俗文化財に認定されました。飯山を代表する食文化として今も引き継がれています。
富倉そば 富倉地区に伝わる郷土料理。かつては、つなぎに使う小麦の栽培ができなかったことから、「オヤマボクチ(山ゴボウ)」というモリアザミ科の野生植物の葉から取り出したモグサのような繊維をつなぎとして使用。そのため麺のコシが強く、つややかな色合いとともにツルツルとした食感が味わえます。今は手間ひまが掛かり、作り手も少なくなっていることから「幻のそば」と言わます。
笹ずし くるみや山菜などをご飯の上にトッピングして笹の葉の上にのせた素朴な寿司。戦国時代に上杉謙信が春日山城から富倉街道を通って川中島合戦に出陣した際に富倉地区の村人が笹の葉の上にご飯とおかずを一緒にのせて差し出したのが始まりと言われています。このことから別名「謙信寿司」とも呼ばれるようになりました。平成12年には県の選択無形民俗文化財に認定されています。
えご えご草は日本海側の一部の沿岸のみに見られる海草。ミネラルやビタミンを豊富に含み、かつては垰道を行き来している越後の魚商人が天日干ししたえごを運んで来ました。冠婚葬祭や人寄せには必ず供される料理で、海のない飯山で貴重な海産物を工夫して取り入れた逸品です。
いもなます 江戸時代から冠婚葬祭などの際に出されて来た寺の町・飯山の伝統的精進料理。ジャガイモ本来のデンプンを取り除き酢を使って炒めるので、シャキとした歯ざわりと酢の香りが特徴的。品のあるぜいたくな料理です。
作った料理は、坂原さんのご自宅である古民家の一角、囲炉裏の間でいただきました。
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